エジソンやアインシュタインも発達障害だった?!

発達障害では苦手なことがある一方、特定の能力で優れた才能を発揮する人もいる。エジソンやアインシュタインも発達障害だったという説があり、国内でも医師や大学教授、芸術家などとして活躍する人もいる

 テレビドラマや映画になった「いま、会いにゆきます」(小学館)などの著書がある作家の市川拓司さん(48)も発達障害を公表している。

 市川さんは子どもの頃からじっとしていることができず、時と場面を選ばず大声を出し、相手が聞いていなくても一方的にしゃべり続けた。授業中は教室の座席の間をほふく前進して友だちの頭をたたき、高いところから飛び降りたい衝動が抑えられず3階の教室から飛び降りようとした。友人関係で困難を感じることはなかったが、教師からは「お前はクズだ」「黙れ」などとよく殴られたという。


 大学卒業後に出版社に就職したが、本音と建前の違いを受け入れることができず苦労し、3カ月で退社。次に事務職として税理士事務所に14年間在籍したが、自分から電話をかけられない、記憶力が弱く同じ取引先に2回行ってしまうなどの失敗をした。40歳で作家として生きることを決めてからは、自分のペースで仕事を進めることができ、大分楽になったという。

 そんな市川さんを、両親は人と違うという理由で叱ったことがなかった。小中学生の時には、よく先生から「お母さんに渡して」と封筒を持たされた。母は何も言わなかったが、大人になってから内容が苦情だったと知った。

 「普通の人と同じになれると言われても今のままでいたい。発達障害の特性とされることも、私にとっては捨てがたい」と市川さんは言う。感情が増幅する特性は、ジャガイモを食べただけで気を失いそうなほどおいしく感じられる。突然昔の感情が当時のままによみがえる発作は、40代を生きると同時に17歳の夏の日を生きているような感覚に陥り、その感覚で小説を書くことも多い。

 「自尊心さえあれば、人と違っていてもタフに生きられる」と市川さんは話した。本人の自己肯定感、自尊心と周囲の理解があれば、発達障害の大人も居心地がよい。そんな社会はきっと、誰にとっても心地がよいはずだ。