芥川龍之介の遺稿から

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「僕は勿論死にたくない。しかし生きてゐるのも苦痛である。
 他人は父母妻子もあるのに自殺する阿呆を笑ふかも知れない。
が、僕は一人ならば或は自殺しないであらう。
 僕は養家に人となり、我儘らしい我儘を言つたことはなかつた。
 (と云ふよりも寧ろ言ひ得なかつたのである。
 僕はこの養父母に対する「孝行に似たもの」も後悔してゐる。
しかしこれも僕にとつてはどうすることも出来なかつたのである。)

  今僕が自殺するのは一生に一度の我儘かも知れない。
 僕もあらゆる青年のやうにいろいろの夢を見たことがあつた。
けれども今になつて見と、畢竟気違ひの子だつたのであらう。
 僕は現在は僕自身には勿論、あらゆるものに嫌悪を感じてゐる。」

 

彼に何があったのかは、今となっては想像でしかありません。

でもきっと彼には「信じられるもの」が無かったのだろうと思います。

 

信じられるもののパワーは、人を生かし続けます。

『夜と霧』の中でフランクリンは、そのことを述べています。

 

希望信じられるものを皆さんが持てますように・・・。