うつにみられる9つの症状

うつ病によくみられる9つの症状を説明します。
1) 憂うつな気分
うつ病の人は、気持ちが沈み込んでいることがよくあります。このような状態を「抑うつ(よくうつ)」といいます。
「気分が晴れず、やる気が出ない」と思い悩んでいるのです。
こうした症状は午前中にひどく、午後から夕方にかけて改善してくることがよくあります。
憂うつな気分を感じているときに、イライラ感が強くなって怒りっぽくなったりすることもあります。
それが性格の問題と間違われてうつ病の症状であることに気付かれないことがあるので、注意しなくてはなりません。
 
2) 興味や喜びの喪失
これまで楽しんでできていた趣味や活動にあまり興味を感じられなくなった状態です。
何をしてもおもしろくないし、何かをしようという気持ちさえ起きなくなってきます。友達と会って話すのが好きだったのに、会ってもおもしろくないし、かえってうっとうしくなってきます。運動が好きだったのに熱中できませんし、テレビでスポーツ番組やドラマを見てもおもしろくありません。音楽を聴くのが好きだった人が、好きな音楽を聴いてもちっとも感動しません。性的な関心や欲求も著しく低下してきます。
このように何をやってもおもしろくないので、自分の世界に引きこもるようになってきます。その変わりぶりは、まわりの人から見れば、あんなに喜んでやっていたものをなぜやらなくなったんだろうと不思議に思えるほどです。
 
3) 食欲の減退または増加
一般にうつ病では食欲が低下してきます。一方、それとは逆に食欲が高まることもあり、また、甘い物など特定の食べ物ばかりほしくなることもあります。
食欲がなくなった人は「何を食べても、砂を噛んでいるようだ」「食べなくてはいけないと思うから、口の中に無理に押し込んでいる」と訴えることがよくあります。あまりに食欲がなくなって、一ヶ月に4キロも5キロも体重が減少してしまうこともあります。
 
4) 睡眠障害(不眠または過眠)
うつ病では不眠がよく現れます。寝つきが悪くなるだけでなく、夜中に目が覚めて寝つけなくなったり、朝早く目が覚めてしまったりするのです。悪夢にうなされることもよくあります。
とくに朝早く目が覚めるのはうつ病に特徴的で、「午前三時症候群」と呼ぶ人もいます。いつもよりずっと早く目が覚めてしまうのです。しかも、うつ病にかかっている人は、このように早く目が覚めたからといってすぐに起きあがれるわけではなく、布団のなかで悶々と思い悩んでいることがよくあります。
逆に、夜の睡眠が極端に長くなったり、日中も寝てばかりいるといった過眠症状が現れることもあります。
 
5) 精神運動の障害(強い焦燥感・運動の制止)
うつ病になると、ほかの人から見てもすぐにわかるほど身体の動きが遅くなったり、口数が少なくなったり、声が小さくなったりすることがよくあります。このような状態を、専門的には精神運動制止と言います。
また、逆に、じっと座っていられないほど焦燥感が強くなったり、イライラして足踏みをしたり、落ち着きなく身体を動かしたりするようになることもあります。このように焦燥感が強くなっているときには、つらさを何とかしたいと焦って話し続けたりしますので、表面的には元気そうに見えてしまい、うつ病だと気づきにくいので注意しなくてはなりません。
 
6) 疲れやすさ・気力の減退
ほとんど身体を動かしていないのにひどく疲れたり、身体が重く感じられたりすることがあるのもうつ病の症状の一つです。
気力が低下して何をする気もおきなくなりますし、洋服を着るといった日常的なことにさえ時間がかかるようになります。何とかしなくてはならないと気持ちだけは焦るのですが、それをするだけのエネルギーがわいてこないのです。
 
7) 強い罪責感
うつ病になると、ほとんど根拠なく自分を責めたり、過去の些細な出来事を思い出しては悩んだりするようになります。
一つのことをくよくよ考え込んで、何回も何回もほかの人に確認をしたりするようになることもあります。こうした状態が進むと、会社のプロジェクトがうまく進まないことや、不況のために会社の成績が落ちていることまで自分の責任のように思えたり、不況になったことまで自分のせいだと妄想的に思いこむようになったりもします。
 
8) 思考力や集中力の低下
注意が散漫になって、集中力が低下してくることがあります。そのために仕事が以前のように進まなくなったり、学校の成績が落ちたりするようになります。
また、決断力が低下して、大したことでなくてもあれこれ考えて何も決められなくなります。 
中年の人は、自分がボケてきたのではないかと心配していたりします。また、高齢者の場合には実際に痴呆のように見えることがあります。しかし、真の痴呆と違って、抑うつ状態による痴呆様の症状は治療によって改善するために、仮性痴呆と呼ばれています。 しかし、逆に、痴呆状態がうつ病と間違えられることもあるので注意が必要です。
痴呆の場合も、何となく元気がなくなり、記憶力が衰えてくるので、うつ病ではないかと思われるのです。また、高齢者の場合にはうつ病を契機に痴呆を発症してだんだんと症状が進んでくるということがあるので注意が必要です。
 
9) 自殺への思い
うつ病になると、気持ちが沈み込んでつらくてたまらないために死んだ方がましだと考えるようになってきます。欧米の研究では、入院が必要なほどのうつ病にかかった人の15パーセントが自殺で命を落としていることがわかっています。
うつ病のときには自分の気持ちを抑える力が弱くなっていますから、普通のときなら考えられないような思い切った行動をすることが多くなるのです。
一般的には、うつ病が少し良くなったときに自殺の危険性が高くなるといわれています。
気分が沈み込んで何をする元気もなくなっているときには、死のうと思ってもそれを実行に移すだけの元気さえ出てきません。しかし、少し症状が良くなると、死にたいと考えれば、その気持ちをすぐに行動に移せるようになります。 
しかも、こうしたときには本人の気持ちとまわりの人の考えとが食い違いやすくなっています。症状が良くなってくると、外見上は元気に見えるようになるのでまわりの人は安心してしまうのですが、抑うつ症状が強かったときのつらい記憶は簡単に消えないために、本人は良くなったという自覚をもてないことが多いからです。こうした食い違いがあると、本人は誰にもわかってもらえないと絶望的になり、自殺を考えやすくなります。