一歩踏み出すための協力者を

マンガが大好きだったCさんは、「絵を描くこと」が自分の趣味になりました。
小学校のころはサッカーをしたり、空手をしたりしていましたが、両方とも人間関係でやめてしまったのです。
中学校は、趣味であるイラストを描くことばかりをやっていてあまり勉強などしたりしませんでした。
それと同時に、クラスメイトと話すこともあまりなくなっていきました。
家でゴロゴロしている所為で体重も多くなり、学校で話す友達はいつも決まった2~3人、休憩時間の度に絵を見せ合ったりしていました。

家では、父親の暴力や怒りが待っている生活でした。
学校の成績が悪かったりすると、すごく怒ったりして、ご飯抜きやおもちゃの没収、目の前で無理やり勉強をさせられると、いいことは全然ありませんでした。
自分の部屋がないので、趣味の絵を描くこともできずに、ただ、ひたすら言われたとおりにするだけでした。

そんななか、中学校の男子生徒がCさんをとてもからかって笑いモノにしました。
それからというもの、Cさんは父親や男子生徒の所為で男性恐怖症になり、学校へもあまり行かないようになってしまったのですが、
父親がそれを許してくれるはずもありません。
「お腹が痛い」、「しんどい」…など、ことあるごとに学校を休む理由をつくったのですが、父親は「そんなことで休むな。熱があったら学校を休ませてやる」と言って
Cさんを学校へ行かせていました。しかし、Cさんはどうしても嫌なので、布団の中へもぐり、
ゴハンも食べず、お風呂も入らず、ずっと、何日も布団の中にもぐり続けたのです。
そうこうしている内に父親の暴力がどんどんひどくなっていき、ついには母親から離婚することになったのです。

それを聞いたCさんは、もちろん母親の方へ引き取られ、2人で生活をするのですが、
その時にはすでに生きている上で何もいいことがないと、人生を楽しむことに諦めていました。

ほとんど学校へ行かずに中学校を卒業しましたが、母親がお金がないのでCさんが就職をすることを考えて、
普通科全日制の高等学校へ行かせることにしました。
母親は環境が変わったら、少しは学校へ行ってくれるかな?と考えたのです。

ところが、中学校時代の男子生徒からの嫌がらせを思い出してしまうので、やはり、高校も行かなくなってしまいました。
学校の先生から「単位があるから来ないとだめですよ」と励ましても、出ようとしません。
ついには、ストレスとご飯を食べないことで、体重も60kg台から40kgあるかないかまで落ちてしまいました。

ある日、少しだけでも高校へ行ってもらおうと母親に連れて行かれたのですが、その1日で一応仲が良くなった友達がいました。
その友達はG君という男子なんですが、他の男子生徒と違ってとっても落ち着いているのです。
しばらくしてから、常にG君と遊ぶようになったので、みんなから「付き合っている」と冷やかされたりしていました。
しかし、G君は冷やかしには乗らずに、いつも上手くごまかしていました。
G君は、責任感が強く、部活もやっており、勉強も頑張り屋さんでフレンドリーなので男女問わずとても人気がある人でした。

Cさんは人見知りで自分から行動するタイプではなかったのですが、G君が色々な所へ遊びに連れて行ってくれるので、色々な体験をたくさんしました。
その先々で知らない人と話したりしますし、学級委員なども一緒に立候補しようと誘ってくれたり、G君と仲が良い運動部の人と話したりしていたので
人と話すことに免疫が付き、クラスのみんなとは話せるようになったのです。

G君は、さらにG君が既に働いているアルバイト先で一緒にバイトをしようと誘われました。
初めてのバイトで面接も受かるかわからずに、ドキドキしていたのですが、1発で受かり、一緒に働くことになりました。

他の人に「何かをしろ」と言われてもやる気が起きなかったし、自分から行動しようとは全然思っていなかったCさんでしたが、
G君のおかげで1歩踏み出すことができました。
別の言い方で言いますと、G君が話しかけてきた時にCさんがきちんと会話をしたおかげで
自分自身で克服できたのです。

現在は、G君と一緒に暮らしているようです。