防衛大:暴力で抑うつ状態に 上級生ら刑事告訴へ

毎日新聞 2014年08月04日

 防衛大学校の学生寮(神奈川県横須賀市)に入寮していた2年生の男子学生(19)が、上級生らに暴力を受けて抑うつ状態になり病欠に追い込まれたとして、週内にも傷害容疑で刑事告訴することが分かった。男子学生から相談を受けた岡田尚弁護士が4日、明らかにした。男子学生は現在、福岡県の実家で静養中。   

 岡田弁護士によると、男子学生への嫌がらせは昨年夏ごろから始まった。今年5月初旬に届け出を忘れて帰省し、大学校に注意されたことがきっかけでエスカレートし、寮生活の指導役を務める4年生と同級生2人の計3人から殴られたり、蹴られたりしたという。

 男子学生の家族が教官に抗議し、暴行に関わった学生からは謝罪を受けたが、別の学生から掃除を押しつけられるようになった。

 男子学生は耐えきれずに5月下旬、実家に帰省。自衛隊病院で診察を受け、上級生らからの暴力を伝えたが、診断書は「進退の悩み」と書かれた。しかしその後、地元の2病院で再診察を受け、両院で「重度のストレス障害」と診断された。

 自衛隊員のいじめを巡っては、東京高裁が海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」の男性乗組員の自殺原因をいじめと認定。国などに約7350万円の支払いを命じる判決が5月に確定している。

 岡田弁護士はたちかぜ訴訟の原告代理人。男子学生は「嫌がらせを受け、校内のカウンセラーに相談したが、『頑張って耐えるように』と言うだけで何も動いてくれなかった」と書面で伝え、自衛隊病院に対しても不信感を募らせているという。

 岡田弁護士は「日常的に暴力が繰り返されていたとすれば問題。幹部候補生たちが無関心でよいのか」と話している。

 防衛大学校は自衛隊幹部を養成する教育機関。学生の身分は特別職の国家公務員で全員が学内の寮に居住し、食事や手当、ボーナスなどが支給される。学生数は約2000人。

 防衛大学校総務課は「事実関係の把握に努めている段階でコメントできない。これから関係当事者を特定し、(暴力行為があったかなど)事情を聴く」としている。【水戸健一、田中義宏、斎藤良太】