孤独とうつ

新年度を前にして、これから初めての一人暮らしをスタートさせたという人は多いのではないでしょうか。


一人暮らしでは、家族の目を気にしないですむという自由さがある一方で、ふとしたときに話し相手がいなくて寂しい思いをすることもありますよね。


特に、この春から新社会人になった人の場合、慣れない仕事の悩みや愚痴を家族に吐き出すことができず、ストレスが余計にたまりやすいかもしれません。


実は、フィンランドで行われた研究によれば、生産年齢(15~64歳)で一人暮らしの人は家族と暮らしている人よりも、80%もうつ病のリスクが高いのだそうです。

イギリス公共放送局BBCのニュースサイトでは、以下のように報じられています。

 

何が原因でうつ病になるかは男女で差異があります。たとえば女性の場合は貧困、男性の場合は自分を支えてくれる人の欠如がうつ病につながりやすいです。一方、一人暮らしは、男女双方に同じくらい影響を与えます。


今回の研究では、フィンランド人およそ3,500名(男性1,695名、女性1,776名)を被験者として、抗うつ剤の使用に関する調査を行いました。被験者の平均年齢は44.6歳です。


調査は2000年から2008年にかけて実施され、その間に被験者らの生活スタイルに関する様々な情報が集められました。


例えば、一人暮らしかどうか、人間関係、職場風土、教育水準、所得、職場での地位や住宅の状況、さらに喫煙や飲酒の習慣、余暇の活動などです。


こうした情報を集めた結果、一人暮らしの人はそうでない人よりも、2000年から2008年の間に、抗うつ剤を買う率が80%も高いことが明らかになりました。


なぜ、一人暮らしはうつ病のリスクを高めるのでしょうか。

研究者は、誰かと一緒に暮らしていると、精神的なサポートや、誰かとつながっているという感覚、及びうつ病の予防となる多くの要素を得やすいからではないかと説明しています。


つまり、一人暮らしの人は、孤独感を募らせたり、社会的交流が欠けているように感じたりすることが多く、これがうつ病のリスクを高めてしまうのです。


今回の研究を主導したフィンランド労働衛生研究所のローラ・プルッキ・ラバック博士は、一人暮らしの人はメンタルヘルスの問題を抱えるリスクが高いとしたうえで、以下のようにコメントしています。


「この種の研究は、リスクを過小評価する傾向があります。というのも、うつ病のリスクが高い人は、最後まで調査に参加できないことが多く、実態を把握しきれないからです。それに、うつ病であるにもかかわらず治療を受けていない人は、患者の数に入らないという問題もあります」


つまり、今回の研究で、“一人暮らし”と“うつ病のリスク”との関係が明らかになったものの、うつ病の実態解明のためには今後さらなる研究が必要ということですね。


また、精神衛生慈善団体の所長ベス・マーフィー氏は、一人暮らし世帯の増加が国民の精神衛生面に与えた影響は明白だとしたうえで、以下のように述べています。


「孤独になると、人は自分の感情を吐き出す場を失います。自分の感情を打ち明けることは、うつ病と向き合い、これを治療するうえで非常に有益です。ですから、一人暮らしでうつ病を抱えている人は、単に抗うつ剤に頼るだけでなく、会話方式によるセラピーのような治療法をとりいれるほうがいいでしょう。一人暮らしの人は、安心して話し合ったり一緒に問題を解決したりする環境が必要なのです」

 

以上、一人暮らしとうつ病のリスクについてお伝えしましたがいかがでしたか?

この春から一人暮らしを始めた人だけでなく、すでに一人暮らし歴が長い人も、ストレスを抱えた場合には、なるべく早く信頼できる人に悩みや愚痴を吐き出すことが大事だといえるでしょう。


また、あなたの身近で一人暮らしをしている人も、外で見せる明るい笑顔とは裏腹に深い闇を抱えているかもしれません。

なので、彼らが真夜中に突然、電話をかけてきたとしても、どうか面倒がらずにできるだけ彼らの話に耳を傾けてあげてくださいね!