子供の脳と親の影響

幼少期のネグレクトは脳の発達を損なう
(Mocosuku編集部)

ネグレクトとは育児の放棄、または怠慢のことです。
食事を与えないといった極端なものでなくても、清潔で快適な環境を与えない、子供が泣いても無視するといったことも含まれます。「子供と向き合わない」と言い換えてもいいでしょう。

衰弱死など身体的な影響だけでなく、精神的にもトラウマになることは以前から知られていました。
最新の研究では、幼いころにこのような状態が続くと、脳の白質にも悪影響があることが明らかになりました。


◆施設での養育に足りないもの
この研究はルーマニアの捨て子を対象として行われました。施設で育てられて、社会的、精神的、感情的、言語的なネグレクトを経験した子供たち26人と、良い里親に育てられた23人、比較対象として実の家族の元で育った20人が調査対象となりました。

2歳半、3歳半、4歳半、8歳、12歳と追跡調査した結果、ネグレクトされた子供の脳の白質には顕著な変質が見られました。
施設に収容されても早い時期に良い里親に預けられた子供では、白質に大きな変化は見られなかったそうです。


◆早期学習を左右する白質
白質とは神経線維が集まっている部分で、脊髄から大脳や小脳の深部に広がっています。生まれたときには脳の一部にしかなく、20歳くらいまでかけて作られていくものです。

従来は単なる情報の伝達器官だと思われていましたが、近年の件研究では、白質と学習能力に相関関係があることが明らかになりました。

白質の発達は経験や環境によって変わり、特に未完成の脳の白質は外部からの刺激を受けて変化します。
たとえばプロのピアニストの白質は一般の人と明らかに違いますが、早く練習を始めた人ほど広範囲に広がっているそうです。


◆経験が脳の発達を促す
先にあげた研究レポート執筆者の一人でボストン小児病院のヨハンナ・ビックさんによると、ごく幼い時期のネグレクトは脳の白質構造自体に影響を及ぼすことになります。

子供の脳の発達には経験が大きな役割を占めます。施設で育った子供は経験も乏しい上、それを受容する脳機能にも問題があり、そのため学習能力や行動面での発達の遅れが見られるのだと、研究者たちは結論付けています。


◆三つ子の魂百までも
おなじみのことわざですが、それには親の影響も大きいということを忘れてはいけませんね。
育児の途中には、言うことをきかない子供に手をあげたくなるとか、泣き声に耳をふさぎたくなることもあります。
それはあなたが子供に真剣に向き合っているからなのです。

罪悪感を覚えて子供を遠ざけるのでなく、落ち着いたらたっぷりスキンシップして、親の愛情を伝えてあげましょう。