信頼関係つくりで欠かせないもの

カウンセリングを行うときに、欠かせないのが「ラポール(信頼関係)の構築」です。


では、この「ラポールとは何か?」について一般に方々にも通用するお話をしましょう。


1.人間関係を良好にする「コミュニケーションスキル」


人間関係を良好にするために不可欠なのは、当然のことながら「コミュニケーションスキル」です。「コミュニケーションスキル」が高いがゆえに、いろいろな人と良好な関係を保つ人が、あなたの周りにも、いることでしょう。やはり「コミュニケーションスキル」を伸ばすことが、人間関係を良好にするうえで最も重要なことです。


ただ、「コミュニケーションスキル」 について勘違いしている人が多すぎることも事実です。「コミュニケーションスキル」とは「話す能力」や「喋る技術」のことだと思い込んでいる人が多いよう ですが、それは違います。


「聞く力」「質問テクニック」も含めて、「言語的コミュニケーション」も大切ですが、もっと重要なのは言葉として表現しない「非言語コミュニケーション」なのです。


何より「非言語コミュニケーション」の中でも、大切なのが「ラポール」。コミュニケーションスキルを高めるうえでもラポール構築を、日ごろから心掛けていきましょう。


2.「ラポール」とは何か?

それでは、「ラポール」とはそもそもどういう意味なのでしょうか。ラ ポールとは、もともと臨床心理学の用語です。コーチングやNLP(神経言語プログラミング)でも最重要キーワードとして紹介される概念です。


セラピストや コーチと、クライアントとの正しい関係を指し、相互に信頼し合い、「安心・安全の欲求」が満たされている状態を、「ラポールが構築されている」と呼びます。


たとえば……

■ 一緒にいて、緊張せずにリラックスできる状態

■ お互いが心を探り合う必要がない状態

■ お互いが相手を尊重している状態


相手を尊敬していても、その人の前だとついつい緊張してしまう、というのであれば、ラポールが正しく構築されていると言えません。


いっぽう、リラックスし過 ぎて、相手に無理難題を押し付けたり、相手の存在を承認できないような態度をするのであれば、これもラポールが構築されているとは言えないでしょう。一緒 にいて落ち着き、相互にリスペクトできている状態を「ラポールが構築されている」と呼びます。


3.「ラポール」構築の3つのポイント

それでは、どうすればラポールを構築できるのでしょうか。「ラポール」は状態をあらわしており、プロセスではありません。ですから、「相手と良好な関係を維持するために、まずはラポールを構築することだ」と言っても、普通はどうしたらいいかわかりません。まず、ポイントは「行動」だと覚えましょう。


非言語コミュニケーションは言葉で表現されない部分ですから、「表情」「姿勢」「態度」といった要素が含まれます。しかし相手とラポールが構築されていなければ、「表情」「姿勢」「態度」を変えようとしても難しいとも言えます。


しかし日ごろの「行動」であれば、できない理由がありません。


たとえば上司であれば、部下と話をする時間を作 る。日ごろから声をかける。こういった行動の積み重ねが大切です。部下に何を話すのか、話し方はどうしたらいいかと悩む前に、行動を続けることです。


反対に、部下であれば、言われたことをキッチリやる。与えられた結果を出す。この積み重ねで上司に信頼されていきます。家族でも同じですし、友人同士でも同じ です。


相手が何を考えているかわからない、と思うのは、相手がこちらの期待した行動をしていないからです。ですから心の探り合いに発展してしまい ます。ラポールは1回や2回の接触で成り立つものではありません。


関係の歴史によって熟成されていくものです。ラポールが構築されていないときは、面と向 かって話をすると緊張するもの。しかし日ごろの行動は自分のペースでできます。相手が望む行動をし続けることが重要です。


もしも相手の期待に応えようと行動しているにもかかわらず、相手から信頼されていないと感じるのであれば、心を開いて相手の望む行動を知るようにしましょう。自分はできていると思っても、相手からも同様に認識されているか、わからないものですから。


4.信頼関係のレベルをチェックする「ラポール診断」

2つ目のポイントとして、ラポールを簡単に計測する「尺度」について解説していきます。その「尺度」とはズバリ「待つ」という概念を使って計測します。どれぐらいの時間、相手を「待てるか」ということです。


人を信用していると、今現在、その人に対して何らかの物足りなさを感じたとしても、いずれ自分の期待通りの行動をするに違いないと思い、それまで「待つ」ことができます。


しかしながら、その人を信用していないと物足りなさを感じた時点ですぐに指摘したくなります。例えば信頼できない部下から 報告、連絡、相談がない場合、自分の指示した通りのことをやっていないのではないかと思い込み、相手の報告や連絡を「待つ」ことができません。


ついつい、こちらから「どうなってるんだ?」と、質問したくなります。部下から「ちょうど今日、報告しようと思っていたんです」と言われて も、相手を信用していないと「ウソつけ」と思ってしまうものです。


ひどい場合は、「私の部下はもう変わらない。人間、この歳になると変わらないもんだ」な どと勝手に決めつけて、人の変化を「待つ」こと自体を放棄します。とても残念なことです。


自分との信頼関係も同じです。自分との信頼関係というのは「自信」のこと。自信がない人は、自分を信頼して「待つ」ことがで きません。何かをやろうと思っていても、自信さえあれば、たとえ今はやらなくとも、自分のことだからいつか必ず行動を起こすに違いないと思うことができま す。そして冷静に、自分の気分が盛り上がるまで待てるのです。自分を信頼してるからです。


いっぽう自分を信頼していない人は、自分のやる気が起こらないときはやたらとソワソワします。このまま放って置くと、きっとやらないまま時 間が過ぎていくに違いない。


どうしたら自分はやる気を起こすのだろうかと考え込んでしまいます。自分がやる気を起こすまで「待つ」ことができません。挙げ 句の果てに、「自分はこういう性格だから」と、自分自身を諦めてしまう人もいます。


このように、信頼関係を示す尺度は、「待つことのできる時間」で計測することができます。もしもあなたの 周りに、あなたを急かしてくる人、必要以上に「早く早く」と言ってくる人がいたら、その人から信頼をされていないと受け止めてもいいかもしれません。


他の 人は待てるのに、あなたに対しては待てない、という態度を示す人がいたら要注意です。自分の行動を見直してもいいでしょう。信頼を失っている可能性があり ます。