ADHDの治療とは?

ADHDの治療とは

大人のADHDの特徴をもつ人は、複数の異なる生活環境において、
さまざまな場面で、日々困難を感じることが多いのではないでしょうか。
それが積み重なると、精神的にも辛い状況となり、他の精神疾患を併発するなど、
二次的な問題につながる可能性も出てきます。

だから

適切なサポートや治療が必要です。

ADHD治療の目標

  • 職場や学校、家庭での悪循環が好転し、自信を取り戻して自分の特性と折り合えること
  • それによって、充実した社会全体が送れるようになること
    ADHDの特性である不注意、多動性、衝動性をなくすことだけが治療の目標ではありません。

治療する上での大事なポイント

  • 自分の生活の中の困難を理解し、対処方法を身につけていくこと
  • 周囲により理解者、サポーターを得ること
    治療を始めても、すぐには変化を感じることができないかもしれませんが、徐々に症状が改善し、悪循環がなくなり、よいサイクルがまわりはじめると、少しずつ成功体験を積み重ねることが増えてきます。

治療の全体像

大人になって初めて診断を受ける場合

評価・診断
一番大切な部分ですので、子供のころのことや現在の問題について十分に先生に伝えてください。この評価や診断が、その後の全ての基礎となります。
治療の開始
ADHDはあなたの特性とも捉えることができますが、その特性のためにご自分や周りの人が困難を感じている場合には、その特性と周囲の環境とのバランスを改善するために治療を行います。
治療は、環境調整などの心理社会的治療からはじめます。
お薬の治療の開始
心理社会的治療の効果や、周囲との状況から判断し、必要であれば薬による治療を組み合わせていきます。
持続時間(治療の継続)
治療の継続によって、日々の生活の中で改善している点を感じることが増えていくでしょう。それはあなたの努力による結果です。
ご自分の変化を自覚し、自信につなげてください。
治療の再検討
職場や学校、家庭で困っていた状態が好転し、それが十分な期間維持できたら、今後の治療の必要性を再検討します。
薬の中断はタイミングも重要ですので、あせらずに十分な期間をとり、服用を中止するときは、必ず医師と相談して決めましょう。
治療の再検討
しばらく様子を見て、ご自身で生活を組み立てる自信がつき、周囲と折り合いをつけることができるようになれば、治療は終了となります。
環境や状況の著しい変化などにより症状コントロールが困難になるような場合は、再び治療が必要になることもあります。
必要なときに必要な支援を受けられることが大切です。

監修:
奈良県立医科大学看護学科 人間発達学 教授 飯田 順三 先生
東京都立小児総合医療センター 顧問 市川 宏伸 先生
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野 教授 尾崎 紀夫 先生
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院 小児精神保健科
部長 齊藤 万比古 先生
こころとそだちのクリニック むすびめ 院長 田中 康雄 先生
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 樋口 輝彦 先生
東海大学医学部専門診療学系精神科学 教授 松本 英夫 先生
久留米大学医学部 小児科学教室 発達障害担当教授 山下 裕史朗 先生


ADHDの治療方法

大人になって初めて診断をうけて治療を開始する場合、環境調整などの心理社会的治療と、薬物療法があります。


暮らし方の見直し

  • 指示は短く、簡潔に出してもらうことで、記憶の保持につなげる
  • 言いたいことは、時間をおいて熟考してから、人に伝える
  • 計算や書類作成など苦手な事は、誰かに補助を頼むようにする
  • 大失敗したことは、それ以降、「してはいけないこと」ルールに加える
  • 困ったときには、自分を過信せず家族や友人を頼る


生活環境の見直し

  • 壁のポスター、テレビの音量など、集中の妨げになる事柄をとりのぞく
  • イライラした時には、一人になれる場所を確保しておく
  • 道具(メモ帳や携帯電話のアラームなどの)をうまく活用する
  • 予定は共有ボードに書き出して、家族に一声かけてもらえるように依頼する
  • 出かける際に必要なものは、置く場所を決めておいて、必ずそこで管理する


人間関係の見直し

  • 特性を説明し、面倒でも何度も注意してもらえるようにお願いする
  • 作業の締切期日が近くなったら一声かけてもらえるようにお願いする
  • 自分を過信して安請け合いせず、必ず相談してから返事をする


ペアレント・トレーニングを応用しましょう

ADHDがあるお子さんの保護者に特性や対応法を学んでもらう「ペアレント・トレーニング」の考え方を、周囲の人との関係性に応用する事ができます。
気をつけて欲しいことを伝えて、よりよい関係を築きましょう。


薬物治療

成人期におけるADHD治療では、主にアトモキセチンとメチルフェニデートというお薬が使われます。どちらも脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドパミンの不足を改善する働きがあります。


監修:
奈良県立医科大学看護学科 人間発達学 教授 飯田 順三 先生
東京都立小児総合医療センター 顧問 市川 宏伸 先生
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学・親と子どもの心療学分野 教授 尾崎 紀夫 先生
鳥取大学 地域学部地域教育学科 教授 小枝 達也 先生
社会福祉法人恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院 小児精神保健科
部長 齊藤 万比古 先生
こころとそだちのクリニック むすびめ 院長 田中 康雄 先生
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 理事長・総長 樋口 輝彦 先生
東海大学医学部専門診療学系精神科学 教授 松本 英夫 先生

(大人のためのADHD.co.jpから)