又吉直樹さんの仕事術

第153回芥川賞を受賞した又吉直樹さんは、お笑いのネタ帳を作成しながら文章力を磨きあげていったそうです。


受賞前からの彼の私生活を追った番組を見ました。

その番組の中で彼が創作活動に借りている書斎の様子が紹介されていました。


家賃4万円の木造のアパートで机以外の物をなるべく排除したその部屋は、至ってシンプルなものでした。その理由として、「目の前にいろんなものがあると集中できなくなるから」というコメントも言っておられました。


試験前になると急に机の周りを片付けだし、果ては部屋のレイアウト変更やちょっとした改造までやってしまうことが常であった学生時代を思い出して、「確かになぁ」と感心して見てしまいました。


職場や家庭でも何か大事なことをやろうとする前に「片づけ」から始める人は少なくないと思います。空間的な整理は、物の整理だけではなく、実は感情の整理も含めて行っているのだと脳生理学者の本で読んだことがあります。


終った仕事をいつまでも机の上において片付けない人は、次の仕事が遅い、または出来ない人間だなどという言葉を聞いたこともあります。


先の脳生理学者の本では、「脳は、基本的に複数のことを同時に処理できない」と書かれてありました。同時進行が苦手なのは、3人の話を同時に聞かされては理解できない凡人の姿を思うと納得させられるものです。

聴覚だけでなく、視覚でも同時に2点に焦点を当てられないのが人間です。


集中力というものは、人間の生活上においても、職務上においてもとても大事なものです。これができなければ、完遂できないものは少なくないからです。


電話を取り、言葉のやり取りだけで内容を把握し、伝達できるかを考えてみてもそれは分かります。ぼんやりしたままでは、簡単なことでも飛躍や誤認が生じてしまい失敗を招きかねない事態になるものです。


そこで、又吉さんに限らず「集中するために、整理・排除する」ということは、極めて効率の良い作業だということができます。


さてカウンセラーとしては、人の集中を邪魔するものは何かということを考えてしまいます。


それは「気分」つまり「感情」であると思います。感情が浮かんできて絡みついてくると集中力は途端に削がれてしまいます。他のことが気になって仕方ないという感情的な状況を治めないままでは、本来の力は発揮できなくなるでしょう。


ではどうすればよいのでしょうか?


それは、「今」にスポットを当てることで防ぐことができます。

今やらなければならないものと、後でも構わないものを分けて考えることができれば、自ずと結果は変わってくることはお分かりだと思います。


物を整理すると脳も整理される、感情を整理すると「今」が変わるというわけです。


整理するためには、撤去するもの、保留にするものの「入れもの」が必要です。心や感情の整理も同様です。カウンセリングルームは、そんな入れものの一つになっています。


又吉さんが、今後も集中して素晴らしい作品を発表されますことを願っております。