壊れてないものを直すな!

英語のことわざに”Don't fix what is not broken.”というものがあります。


現状に問題が無いなら、手を出すな!かえって悪化するからという意味なのでしょうか。


” If it ain't broke don't fix it.”とも言い、よけいなことをしたために、思わぬ災難を受けるという意味でも用いられます。


何でも新しいものは、古いものより優れていると妄信したり、手をかけてあげればあげるほど、何もかもが良くなるはずだと考えていたり、いろいろな信念や情報ミスが重なって、壊れていないものまで直そうとしてしまうことは、私たちの日常のあちらこちらで見られる光景です。


Windows10が、つい先日発表されました。Windows7もしくは8からなら一年間の間は、無償でグレードアップできるということで、早速私もやってみました。


で、結果的にいろいろな不具合や操作性の低下が起こってしまい、上記の言葉を思い出してしまったわけです。今は、「何回か同じようなことをこれまでも経験してきたのに、全く成長してないなぁ」と反省しております。


さて、カウンセラーとして言わせていただけば、人間関係や心身のことでも同じようなことは言えると思います。


標準体形で健康なのに「もっと痩せたい」と無理なダイエットをして身体に不調を起こす方、多少の間が怖くて心配になり人間関係に歪をもたらしてしまった方、理由もないのに浮気が怖くてストーカーに走ってしまい別れ話に進展してしまった方、疑心暗鬼の末に笑顔をなくし闇の中に心を閉じ込めてしまった方など・・・。

そんな方々をたくさん見てまいりました。


その中には、離婚や家族崩壊、失職、破産・・・様々なところにまで追い込まれてしまった方もおられました。


私たちは、どうして「現状維持」に我慢できないのでしょうか。


何もかもが右肩上がりの時代というものはありません。いつか、低迷したり、減速したり、過去よりも悪い結果が続くようになったりすることは、この日本社会を見ていても分かりますし、人間も40代50代に入れば「昔出来たことが今はできない」といった事態を目の当たりにするようになってきます。


年寄り臭い言い方になるかもしれませんが、そんな経験を何度かやっているうちに「現状維持」でさえ、難しいことなのだとやっとわかってきたりするのです。


「未来は素晴らしい」「輝く明日」などというフレーズは世に溢れているのに、「今に満足する」「今日に感謝する」という言葉はあまり見かけません。「明日は、今日より素晴らしい」というと希望に光が差してくるようです。しかし、「明日が、今日と同じだったら幸せだ」という考え方だって、間違ってはいないはずです。


私は、被曝県「長崎」の出身なので、昨日の広島の原爆被害の特集番組を見ていて、突然極限状態にさらされた人々の様子を食い入って見てしまいました。きっとその方々の中には、「今日が昨日と同じだったら・・・」と考えた人もいたのではないかと考えてしまいました。


「壊れていないものを直すな」という言葉を思い出してしまいました。「現状維持」「今に満足」といったことを忘れたら、時に人は痛い思いをさせられると思い出したからでしょう。


今というこの時だって、見つめなおせばきっと素晴らしいものが溢れているはずです。ぜひ、身の回りを再確認して「壊れていないもの」を取り出し、感謝の念を思い出していただきたいと願っております。